更年期うつ・イライラ原因と解消法とは
更年期におけるうつ・イライラといった症状は特別なことではありません。更年期の女性のおおよそ6~32%の人が、 更年期の症状として、うつやイライラを訴え、 人によっては性格が以前とは変わってしまったような印象を受けることも珍しくありません。
この更年期のうつやイライラは原因は未だはっきりとしていないものの、 他の更年期障害の症状と原因が異なるため、解消方法も少し異なっています。
ここでは、更年期のイライラ、短気などの攻撃性の増加、および、不安や悲しい気持ちなどのうつ病など気分の落ち込みやうつ病などについて、症状、原因、解消方法などを紹介しています。
更年期障害の他の症状や治療法については、 更年期障害の症状と特徴をご参照下さい。
更年期のうつ病、イライラの症状
更年期のうつ病やイライラは、以下の様な症状が2週間以上継続する場合、 更年期を原因とするうつ病やイライラなど神経過敏の可能性が高くなります。また、更年期のうつ病やイライラの症状は、 心理的、感情的な症状だけにとどまらず、 行動や身体の変化を伴うことが多くなっています。
更年期のうつ病、神経過敏の症状一覧
■心理面、感情面(総合)
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■価値の低下
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具体的な症状
更年期のうつ病、イライラなどの症状は「個人に大きく依存」します。そのため、具体的な症状も個人によって異なります。
更年期のうつ病、イライラなどの症状の特徴は、
- イライラや落ち込みの原因がわからない
- 以前と性格(人格)が変わった
また、ご自身がそれら症状に気づいている場合もあれば、ご自身は無自覚で、第三者(同居人や友人など)だけが気づいているケースも珍しくありません。
更年期のうつ・イライラの具体例
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更年期のうつ、イライラに似た病気
うつ病やイライラは更年期のホルモンバランスの乱れだけが原因ではありません。 更年期には子供の独立、離婚、妊娠の可能性が無くなったことに対する寂しさなど、 自身や環境の様々な変化があります。そのため、更年期障害以外にストレスが原因となる場合があります。
更年期のうつ病やイライラの発症率はどれくらい?
更年期のうつ病やイライラなどの神経過敏、気分変調の発症率は概ね6~32%と推測されます。アメリカ国立衛生研究所によると、更年期にうつ病やイライラなど気分の変調を訴える人は、 おおよそ8%~38%と発表しており、 過去にうつ病歴のない人が更年期にこれら症状を訴える割合は、更年期以外と比較すると、 おおよそ2倍(ハーバード大学医学部参考、他の調査機関では3倍、4倍の場合もあり)に高まります。
一方、日本の厚生労働省の発表によると、 日本におけるうつ病の生涯有病率(一生に一度以上うつ病を発症した割合)は3~16%としています。
これらから推測すると、 更年期のうつ病、イライラなどの気分変調を訴える人の割合は、 6~32%程度(日本のうつ病生涯有病率に更年期の増加率2倍を乗算した場合)となり、 アメリカ国立衛生研究所が発表している数字と同程度になり、 世界的に見てもそれほど珍しい症状でないことが分かります。
更年期のうつ病やイライラの原因
更年期のうつ病、イライラなど神経過敏、その他の気分変調の原因は分かっていないものの、 エストロゲンの低下によるセロトニンの減少、テストステロンの割合の増加、過去の病歴の再発、更年期障害の他の症状による影響が主な原因と考えられています。更年期のうつ病やイライラの原因
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セロトニンの低下
うつ病の原因である「セロトニン」と「脳への血流」に、 エストロゲンは負の影響を与えます。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれますが、 うつ病患者はこのセロトニンが不足しています。 エストロゲンの分泌が低下すると、 モノアミンオキシダーゼの分解を抑制するため、 このセロトニンの分泌量を低下させてしまいます。
また、うつ病の他の原因は、脳への血流の減少ですが、 エストロゲンには血管拡張作用があり、脳への血流を促進する働きがあります。
この更年期のエストロゲンの分泌量の低下が、 「セロトニン」と「脳への血流」に影響を与え、 うつ病の原因となります。
テストステロンの増加
上記「エストロゲンの分泌量の低下」をさらに細分化させた理論が、 この男性ホルモン、テストステロンの増加とする説です。エストロゲンとテストステロンの割合と更年期のうつ・イライラの関係
女性ホルモン | ||||
エストロゲン | ||||
低い | 高い | |||
男性ホルモン | テストステロン | 低い | 骨粗しょう症 うつ病 肥満など |
性欲減退 |
高い | 攻撃性の増加 イライラ 性欲増加など |
2型糖尿病 乳がん 心臓血管系の疾患 |
ドイツで発表された研究によると、 エストラジオールとテストステロン(男性ホルモン)のバランスが更年期のうつ・イライラの原因ではないか、 と結論付けています。
更年期の女性は、 女性ホルモンだけでなく、 男性ホルモン(テストステロン)の分泌量も低下してしまいますが、 エストロゲンの低下割合と、男性ホルモン(テストステロン)の低下割合は個人によって異なり、 この低下割合によって、上記のような様々な更年期障害の症状が現れるとしています。
また、 ピッツバーグ大学で行われた閉経後の女性3,292人を対象にした研究によると、 女性におけるテストステロンの増加がうつ病と相関関係があるとも発表しています。
これは、女性において、高すぎるテストステロンは攻撃性やイライラを増加させ、 低すぎるテストステロンは不安や抑うつに関係しているとされています。
男性ホルモンであるテストステロンは、攻撃的な性格に関与する一要因とされますが、 テストステロンの割合の増加により、イライラなどの症状が現れるとしています。
過去の病歴の再発
過去にうつ病や月経前症候群(PMS)、産後うつなどを発症した女性は、 更年期にうつ病を発症する可能性が高くなっています。 ハーバード大学の研究によると、 過去にうつ病を発症した女性は、更年期にうつ病を発症する確率がおよそ2倍になるとしています。更年期の他の症状
更年期のほてりや寝汗、睡眠不足などは、それ自体がストレスの原因となるため、 イライラやうつ病を引き起こしやすくなります。2005年に行われたアメリカの世論調査によると、 うつ病や不安症と診断された人は、6時間未満しか睡眠していない割合が高かった、 と発表しています。
最も一般的な睡眠障害である不眠症は、うつ病と関連が強く、 2007年に1万人以上を対象とした調査では、 不眠症の人がうつ病を併発する割合は、 健康な睡眠を取る人と比較すると、 5倍以上高かった、と発表しています。
更年期のうつ病やイライラの解消方法
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薬
抗うつ薬は更年期以外のうつ病にも効果があります。ただし、抗うつ薬には、 便秘や口渇など、いくつかの副作用があるため、利用時には注意が必要です。
また、一部の抗うつ薬は、更年期障害の症状である「ほてり」を軽減する効果も認められています。 更年期のほてりと治療については、ほてり・ホットフラッシュの原因と対策をご参照下さい。
ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、 うつ病の原因が他の更年期障害の症状によるものの場合や、 感情、心理的に軽度のものには効果があるものの、 重度のうつ病を治療するのにあまり有効ではありません。また、ホルモン補充療法のうち、 プロゲステロンは、 うつ病の歴史を持つ女性では、抑うつ症状を増大する可能性があるため、 医師とよく相談してホルモン補充療法を受けるかどうか決める必要があります。
1985年にシャピーラB、オッペンハイムらによって行われた研究によると、 閉経前の女性3名、閉経後の女性8名の重度うつ病患者において、 エストロゲンとプラセボ(偽薬)の投与では全く改善が見られなかったが、 エストロゲンと抗うつ薬では効果があったと発表しています。
ホルモン補充療法については、 更年期のホルモン補充療法の効果と種類をご参照下さい。
心理療法
認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)といった心理療法は、うつ病の治療に効果があります。 そのため、薬やホルモン補充療法を避けたい人にとって、心理療法は非常に有益なうつ病の治療方法です。ある病院で169名の更年期のうつ病患者に対して、心理療法を用いたところ、 約半数が症状の劇的な改善を示し、25%はその後のうつ症状が全く見られなくなったと発表しています。
その他、ご自身でできること
運動はセロトニンやエンドルフィンを増やし、 免疫力を低下させる化学物質を排除することから、 うつ病やその他疲労を伴う精神疾患に効果があるとされています。
運動によるうつ病や精神疲労の効果については、 なぜ運動で疲労が回復するのかをご参照下さい。
また、うつ病の原因であるセロトニンを増やす食べ物には、 ビタミンBやオメガ3脂肪酸の摂取、ダークチョコレートなどがあります。 セロトニンを増やして疲労回復をご参照下さい。
その他、女性ホルモンであるエストロゲンの増やし方については、エストロゲンを増やす方法をご参照下さい。
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