更年期障害とイソフラボンなどの効果

更年期障害とイソフラボンなどの効果とは

更年期障害とイソフラボンなどの効果
更年期障害のいくつかの症状に大豆イソフラボンやリグナン(ゴマに含まれる成分)など、植物性エストロゲンが効果があります。

具体的には、イソフラボン、リグナンは更年期障害のうつ、イライラ、膣の乾燥、尿漏れ、 肥満(中年太り)、物忘れ、骨粗しょう症、心疾患などに効果があります。

ここでは、更年期障害の各症状と、 イソフラボン、リグナンなどの植物性エストロゲンの効果について、 紹介しています。

また、更年期障害に効果のあるサプリメントについては、 更年期障害に効果のあるサプリメントをご参照下さい。

なぜ更年期障害にイソフラボンなどが注目されるようになったのか

更年期障害の治療、症状緩和にイソフラボン、リグナンなどの植物性エストロゲンが注目されるようになった理由は、 アジアの人々と西洋の人々を比較した時に、 心臓血管疾患、更年期症状、乳癌(および他のホルモン依存性癌)、 糖尿病、肥満など、いくつかの病気が非常に少なかったからです。

アジアの人々は、お豆腐、納豆、枝豆、ゴマなど、イソフラボンやリグナンなどの植物性エストロゲンを 恒常的に摂取する習慣があり、 イソフラボンの摂取量を比較すると、日本はアメリカのおよそ18倍以上になっています。

更年期障害とイソフラボンなどの効果一覧

植物性エストロゲンの更年期障害への効果
ほてり △(※1)
気分の変更(うつ)
イライラ
膣の乾燥
尿路症状
中年太り・肥満
物忘れ・記憶力低下
骨粗しょう症
心疾患
※1:ゲニステインは効果があるかもしれない

ほてり

更年期障害とイソフラボンなどの効果 ほてり
更年期障害のうち、ほてりや寝汗など、血管運動神経障害と呼ばれる症状に、 イソフラボンやリグナンなど植物性エストロゲンはあまり効果がありません。

ニュージーランドオークランド大学で行われた研究によると、 更年期のほてりや寝汗症状を持つ4,364名の女性に、 12週間、植物性エストロゲンの含有量が多い食品およびサプリメントを提供したところ、 ほてりや寝汗の頻度と重症度の改善において、ほとんど効果がありませんでした。

また、アメリカ臨床腫瘍学会に寄稿された別の実験では、 化学療法などが使えない更年期の乳がん患者に対して、 植物性エストロゲンを投与したところ、 プラセボ群(タモキシフェン投与、抗癌剤)との比較において、 ほてりや寝汗などの症状緩和に、有意な差異はありませんでした。

その他多くの研究においても、ほてりや寝汗などの血管運動神経障害において、 イソフラボンを始めとする植物性エストロゲンは効果がない、と結論づけています。

ただし、ある研究において、 イソフラボンの1つであるゲニステインを1日30mg以上投与したグループにおいて、 ほてりや寝汗の発生頻度が有意に減少したことから、 ゲニステイン(イソフラボンの成分)がほてりや寝汗を改善する可能性が示唆されています。

ゲニステインを多く含む食べ物は 大豆イソフラボンを多く含む食べ物をご参照下さい。
また、大豆イソフラボン以外のほてり対策については、 ほてり・ホットフラッシュの原因と対策をご参照下さい。

気分の変更(イライラ・うつ)

更年期障害とイソフラボンなどの効果 気分の変更(イライラ・うつ)
イソフラボンやリグナンはイライラやうつなど、気分の変更に効果がある可能性があります。

アメリカ植物栄養素の専門研究機関によると、 植物性エストロゲンは、うつ病などの治療に用いられる薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のように、 働く可能性があると発表しています。

この研究によると、 「抗うつの専門薬であるイミプラミンと比較すると、 その効果は非常に小さいものであったものの、 ゲニステインとダイゼインの両方が、 50μgの容量で、セロトニンの再取り込みを阻害する効果があった。」と発表しています。

また、インドの精神保健神経科学総合研究所によると、 統合失調症、抑うつの症状を持つ47歳の女性において、 抗うつ薬パリペリドン、エスシタロプラムを処方したところ、 症状は改善されたものの、副作用が出たため、 植物性エストロゲンに変更したところ、8週間の補助療法によって抑うつ症状が改善した、と発表しています。

この結果から、従来の抗うつ薬に耐えられない女性や副作用が出る女性において、 イソフラボンなどの植物性エストロゲンは有益である、と考えられます。

またイソフラボン以外に、リグナン(ゴマに含まれる成分)も効果があります。
スイスのチューリッヒ大学において、 ホルモンレベルの変動が激しい45~55歳の193名の更年期の女性に対して、 植物性エストロゲンの尿中濃度と、 うつ病の関連を調べたところ、 尿中イソフラボン濃度と更年期うつ病との関係に相関は見られなかったものの、 尿中リグナンの濃度が低いほど、うつ病のリスクが高かった、と発表しています。

大豆イソフラボン以外の更年期のうつ、イライラ解消法については、 更年期うつ・イライラ原因と解消法をご参照下さい。

膣・尿路症状

アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)において、 尿失禁(切迫性、腹圧性)、夜間頻尿などに悩む7,913人の女性に対して、 2つの植物性エストロゲン(イソフラボン、および、リグナン)と尿路症状の関係を調査したところ、 リグナンが大腸で分解されたエンテロラクトンやエンテロの濃度が高いほど、 これら尿失禁や頻尿が少ないことが分かりました。
一方、イソフラボンと、尿症状には相関関係が見られませんでした。

また、サンパウロ大学医学部で行われた研究によると、 90人の女性がイソフラボン4%を含む膣ジェル1g/日と、 プラセボジェル(偽薬)と、馬のエストロゲンクリーム(0.3mgの/日)を12週間処置したところ、 イソフラボンジェルは、膣の乾燥と性行為による痛みの軽減に有効であることが示され、 これは、馬のエストロゲンクリームと同様の効果でした。

イソフラボンは、萎縮した膣壁のふくよかさをわずかですが、取り戻すのに有効でした。
ただし、経口摂取によるイソフラボンの効果については、明言がありませんでした。

その他、 ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(1993年)での研究によると、 毎日植物性エストロゲンが豊富な食品を45g食べた女性は、 膣の乾燥が少ない、と発表しています。

大豆イソフラボン以外の膣の乾燥、尿漏れ対策については、 萎縮性膣炎は更年期が原因をご参照下さい。

中年太り・肥満

更年期障害とイソフラボンなどの効果 中年太り・肥満
植物性エストロゲンが肥満に有益です。

臨床栄養学のアメリカのジャーナルによると、 イソフラボンとリグナンが血糖値のコントロール、 インスリン抵抗性、高脂血症を改善する効果があるとしています。
これらイソフラボンとリグナンは、膵臓のインスリン分泌や抗酸化作用を通じて、 これら効果を発揮するのでは、と考えられています。

また、名古屋市立大学においても、イソフラボンの一種であるダイゼインが、 肥満に関連する高血圧症の有効な治療になると発表しています。

大豆イソフラボン以外の中年太りの原因、解消法については、 中年太りは更年期が原因をご参照下さい。

物忘れ・記憶力の低下

記憶力の低下や物忘れにも、イソフラボンやリグナンなどの植物性エストロゲンは有効です。

サンパウロでの研究によると、 卵巣摘出(エストロゲンが大幅に低下している)によって、 アルツハイマーや記憶障害が出ているマウスに対して、 植物性エストロゲンが神経伝達物質として働くかどうかを調べたところ、 植物性エストロゲン(α-ゼアララノール)を与えられたマウスは、 迷路試験において、記憶力を向上させただけでなく、 記憶低下に影響する活性酸素の低下や抗酸化酵素の活性を改善しました。

その他、更年期の物忘れ解消法については、 更年期の物忘れをご参照下さい。

骨粗しょう症

更年期障害とイソフラボンなどの効果 骨粗しょう症
植物性エストロゲンの骨粗しょう症への効果は多くの研究により証明され、 世界中で有益であると考えられているものの、 その効果は僅かです。

ノースカロライナ大学が発表した内容によると、 大豆イソフラボンは閉経後の女性において、 骨粗しょう症の改善に僅かな効果しかなかった、と発表しています。
また、ドイツのボン大学でも、イソフラボンは骨代謝回路(骨の再構築)に僅かな影響しかなかった、としています。

心疾患

更年期障害とイソフラボンなどの効果 心疾患
心疾患に関して、大豆イソフラボンが効果があります。

シンシナティ大学で行われた植物性エストロゲン(大豆イソフラボン)と心疾患の効果に対する研究によると、 42人の閉経後の女性において、 イソフラボンを約60mg/日 12週間摂取したところ、 血清および尿中のイソフラボン濃度がおおよそ7~19倍に増加し、 酸化LDLの値(動脈硬化や心筋梗塞、心臓病の危険を測る値)の平均遅延時間に有意な増加が見られ(9.3%)、 HDLコレステロール(善玉コレステロール)が3.7%増加していました。
また、総コレステロール値も有意に減少していました。

また、 1999年に、米国食品医薬品局(FDA)は、 大豆の毎日の消費は、 冠動脈疾患のリスクを低減するのに有効であると発表しています。


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