ホルモンバランスの乱れとは
ホルモンバランスが乱れると、疲労、頭痛、イライラ、不眠など、 様々な体調不良を引き起こします。一方、「そもそもホルモンバランスとは何か」、 あるいは、「ホルモンバランスの整え方とは」については、 あまり語られることはありません。
ホルモンバランスの乱れや不均衡をそのまま放置することは、 糖尿病など様々な病気を引き起こします。
ここではホルモンバランスの乱れについて、 特徴、症状、原因などについて、紹介しています。
ホルモンバランスの整え方については、 ホルモンバランスの整え方をご参照下さい。
ホルモンバランスの乱れとは
本来、ホルモンバランスの乱れとは、 女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのバランスだけでなく、 男性ホルモン(テストステロン)、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなど、 様々なホルモンの総合的なバランスが乱れた状態を示します。また、個々のホルモンの分泌過剰や欠乏など、 具体的には、成長ホルモン分泌不全症、 副腎疲労などによって引き起こされるコルチゾール欠損症なども、ホルモンバランスの乱れと言う場合もあります。
女性に多いホルモンバランスの乱れは、 更年期に関係なく生涯を通じて多くの女性が体験する「プロゲステロンの欠乏」と、 更年期に体験する「エストロゲンの欠乏」、 甲状腺疾患による「甲状腺ホルモンの過剰(欠乏)」の3つとなっています。
プロゲステロン欠乏
ホルモンバランスの乱れのうち、プロゲステロン欠乏は、全ての年代の女性において、 最も一般的なホルモンバランスの乱れです。プロゲステロンは鉱質コルチコイド、アルドステロン、 17-ヒドロキシプロゲステロン、コルチゾール、テストステロン、エストロゲンなど様々なホルモンの前駆体(作られる元となる物質、間接的にも含む)となっています。
そのため、プロゲステロンが欠乏することは、 影響する他の全てのホルモンが減少することを示すため、様々な体調不良を引き起こします。
エストロゲン欠乏
更年期や閉経後の女性において、 最も一般的なホルモンバランスの乱れが、エストロゲンの欠乏です。女性ホルモン エストロゲンは、代謝の向上、膣の潤滑、骨の形成、タンパク質の合成など、 おおよそ300の役割があるとされています。
そのため、エストロゲンの分泌量が低下することは、 それまで正常に機能していたそれら役割を果たせなくなることを意味し、 その影響が更年期障害として現れます。
ホルモンバランスが乱れている時の症状
ホルモンバランスの乱れのうち、全ての年代の女性に多く見られる「プロゲステロン欠乏の症状」と、 特に更年期に見られる「エストロゲン欠乏の症状」について、それぞれ紹介します。プロゲステロン欠乏時の症状
プロゲステロン欠乏時の症状は、以下の通りです。
|
不規則な月経、無月経
無月経、特に3ヶ月以上生理がない続発性無月経には、視床下部や卵巣など様々な原因がありますが、 エストロゲンの分泌低下以外に、プロゲステロンの分泌低下も、無月経の原因となります。無月経の治療のうち、比較的軽症である第一度無月経の治療にゲスターゲン療法(プロゲステロン単独投与) が使われるのはこのためです。
月経痛、月経前症候群(PMS)
月経痛や月経前症候群(PMS)の原因は、 セロトニン不足やプロラクチン分泌異常など、 様々な原因が想定されていますが、未だ明らかになっていません。「エストロゲン過剰、プロゲステロン不足」は、 月経痛や月経前症候群(PMS)の原因の1つではないかと想定されています。
疲労、体のだるさ
プロゲステロンは、女性にとって疲労の強い味方です。プロゲステロンは甲状腺ホルモンの働きを助けます。
甲状腺はしばしば「エネルギーを作り出す臓器」と呼ばれるように、 栄養素をエネルギーに変えたり、体温を上げるなどの役割があり、 甲状腺の機能が低下すると、ほとんどの人が疲労を訴えます。
そのため、プロゲステロンの分泌が低下すると、 生活の中で、疲労、体のだるさ、倦怠感を感じることが多くなります。
また、プロゲステロンの分泌低下同様、 女性の甲状腺疾患にかかる割合は、男性のおよそ10倍程度とされ、 疲労の大きな原因の1つになっています。
甲状腺ホルモンについては、 甲状腺機能低下症が疲労の原因か判断するをご参照下さい。
睡眠障害、不眠症
プロゲステロンは睡眠を促す働きがあります。多くの女性が、黄体期や妊娠初期に眠気が強いと感じるのは、このプロゲステロンの分泌量が増えることによるものです。
年齢を重ねると睡眠時間が短くなり、 途中覚醒(睡眠中に何度も目が覚める)や入眠困難(眠れない)、朝のリフレッシュ感がない、など、 不眠症を患う人が多くなります。 海外で市販されているプロゲステロンクリームの利用者らによると、 「睡眠障害が改善された」、「途中で起きることが無くなった」、「朝目が覚めた時、疲れがとれていることを感じる」など、 睡眠障害の改善に関する報告も多くみられます。
不安、うつ、気分のむら
プロゲステロンは人体が持つ「自然の抗うつ剤」です。産後うつも、 プロゲステロンの産出を増加させていた胎盤がなくなることが1つの原因では、と考えられるほど、 プロゲステロンの不安やうつに与える影響は大きいと考えられています。
プロゲステロンは自然のモノアミン酸化酵素阻害剤として働き、 脳内のドーパミンやセロトニンを増やす働きがあります。 やる気の元となるドーパミン、幸せホルモンであり活動が低下するとうつ病や慢性疲労症候群を引き起こすセロトニンを増やすプロゲステロンは、不安やうつ、気分のむらといった症状を改善してくれます。
不妊、流産の増加、早期流産
プロゲステロンは子宮内膜の調整、受精卵の着床、妊娠初期には、胎盤の作成と、 妊娠を望む女性にとっては必要不可欠なホルモンです。そのため、プロゲステロンの分泌が不足すると、 不妊、早期流産の可能性が高くなってしまいます。
乳房の圧痛
乳房の圧痛は、プロゲステロンの過剰と欠乏のどちらでも起こる症状です。プロゲステロンの分泌量増加に伴う乳房の圧痛は、プロゲステロンが乳腺を発達させる働きがあるためです。 生理前に、プロゲステロンの分泌量が増え、乳房の圧痛を感じることがあります。
一方、プロゲステロンの欠乏による乳房の圧痛は、エストロゲン過剰による症状です。
この痛みは月経周期と関係なく起こるため、プロゲステロンの増加による圧痛とは明確に区別できます。
その他、プロラクチンやFSH、LHの分泌異常なども乳房の痛みを伴います。
性欲の減少
女性の性欲はエストロゲン(とテストステロン)によって支配されると考えられることが多いものの、 プロゲステロンも女性の性欲に一役買っています。雄のネズミに大量のプロゲステロンを与えると性的行動が抑制されますが、 体が本来作るべき量に相当する量を与えた場合には、 交尾行動を促す方向に作用するとされています。
エストロゲン欠乏時の症状
ホルモンバランスの乱れのうち、エストロゲンの欠乏は更年期の女性に最も多く見られる症状です。言い換えると、更年期障害のほとんどの症状が、エストロゲンの欠乏とエストロゲンの欠乏に関連した様々な要因によって引き起こされます。
更年期障害の各症状とその原因、治療法については、更年期障害の症状と特徴をご参照下さい。
更年期障害(エストロゲン欠乏)の症状
■月経
|
■頭痛、肩こり
|
ホルモンバランスが乱れる原因
ホルモンバランスが乱れる原因は、ホルモンの種類によって、様々な原因がありますが、 一般的なホルモンバランスを乱す原因となる要因は、以下のとおりです。
|
|
ホルモン(内分泌)撹乱物質
ホルモンバランスの乱れを引き起こす原因には、 年齢、食生活(特に拒食症や痩せすぎ)、運動など、 様々な要因があるものの、以外と見落としがちなのが、 ホルモン(内分泌)撹乱物質ですホルモン(内分泌)撹乱物質とは、ホルモンでないにも関わらず、 ホルモンを作用させるレセプター(受け皿)と呼ばれる箇所に作用することで、 本来のホルモンの働きを奪ってしまいます。
特にエストロゲンと甲状腺に関わる内分泌かく乱化学物質は種類が非常に多く、 ホルモンバランスを乱す大きな原因となっています。
ホルモン(内分泌)撹乱物質
|
合成エストロゲンは、医師の処方箋を元に足りないエストロゲンを補うため、 ホルモンバランスの視点では、整える方向に働きます。
また、天然ホルモンや植物性エストロゲンは、 2つの側面があります。
更年期のホルモン不足時には補う方向に作用することが多いものの、 ご自身のホルモン分泌が十分な年齢では、悪い方向に作用することもあります。
具体的には、 生理活性の弱い植物性エストロゲンの過剰摂取により、 ご自身が作り出すエストロゲンレベルを低下させたり、 ホルモン量が多い天然ホルモン(妊娠中のメス牛の牛乳)の過剰摂取により、 血中エストロゲン濃度が高くなりすぎる危険もあります。
また、 農薬に使われるカルバリルや、抗酸化物質であるブチルヒドロキシアニソール、 焼却処理過程においての発生するダイオキシン類、化粧品にいくつかの成分、 日焼け止めに使われるベンゾフェノンなどは、エストロゲンや甲状腺ホルモンの阻害剤として働きます。
言い換えると、ホルモン作用を阻害することで、ホルモンバランスを乱す原因となっています。
ホルモンバランスの乱れ 先頭へ |
関連ページ |
メニュー・目次一覧へ |