若年性更年期障害の原因と治療とは
若年性更年期障害とは、 一般的な更年期の開始年齢である45歳よりも早く、 更年期障害の各種症状が出ることです。医学的には40歳未満で更年期障害の各種症状に苦しむ女性とされています。
若年性更年期障害は、大きく3つの経過があります。
- 先に(早期)閉経があり、その後更年期障害の症状が出る場合
- 若年性更年期障害の症状が出たのち、(早期)閉経してしまう場合
- 若年性更年期障害の症状が出たのち、病気と月経が回復する場合
ここでは、若年性更年期障害の症状、年齢、発症率、原因、治療法などについて、 紹介しています。
若年性更年期障害の症状の特徴
若年性更年期障害の症状は、通常の更年期障害の各種症状と同じです。しかし、若年性更年期障害は、通常の更年期障害の症状と比較すると、以下の3つの特徴があります。
(更年期障害の各種症状については、更年期障害の症状と特徴をご参照下さい。)
若年性更年期障害の症状の特徴
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これは、若年性更年期障害の場合、 ホルモン分泌の減少が自然閉経と比較すると非常に急速であることや、 早期閉経を併発した場合、 その後の期間が非常に長いため、と考えられています。
一例を上げると、若年性更年期障害の女性では、 骨粗しょう症の危険性、心臓発作や脳卒中などの確率が2倍以上高くなっています。
インペリアル大学の研究によると、 早期閉経の女性では、閉経後10年において、 活力、身体機能、精神的健康において、 2倍以上悪い結果が出たと発表しており、通常の生活にも大きな影響を及ぼします。
また、月経周期は乱れるものの、若年性更年期障害の症状は全く発症せず、 そのまま早期閉経という例もあり、この症状の個人差は自然閉経による更年期障害と非常に似ています。
若年性更年期障害の年齢
若年性更年期障害は、医学的には40歳未満に更年期障害の症状に苦しむ女性とされています。その多くは、20代、30代であるものの、 イギリスでは、わずか13歳、初潮開始からわずか半年後に若年性更年期障害の症状に苦しむ少女も発見されています。
若年性更年期障害の発症率
若年性更年期障害の発症率は1~5%程度と考えられています。アメリカでは、その発症率を1~4%程度とする研究機関が多く、 イギリスでは、1~5%としています。
ロンドンで行われた4,968人への大規模アンケートによると、 45歳未満(若年性更年期障害の年齢は40歳未満のため、若干異なる)で閉経した女性が全体の5%程度存在し、 40歳以下の早発卵巣不全(POF)の人が1%程度存在しました。
日本もアメリカやイギリスと自然閉経の年齢がほとんど同じことから、 若年性更年期障害の発症率も1~5%程度と考えられます。
若年性更年期障害の原因
若年性更年期障害の原因は卵巣の除去などによる外科的閉経や、 抗ガン剤、早発卵巣不全、ストレス、喫煙など非常に様々です。若年性更年期障害の原因
■病気、薬
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■生活習慣
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外科的閉経(子宮がん、子宮内膜症、卵巣がんなど)
卵巣がんや一部の子宮がん、子宮内膜症などで、両方の卵巣を除去した場合、 直ちに閉経し、急激にエストロゲンの分泌が低下するため、若年性更年期障害を発症する確率が大幅に上がります。抗ガン剤治療
化学療法、放射線治療、骨盤放射線治療などの抗がん剤治療は早期閉経、若年性更年期障害の原因となります。早発卵巣不全(POF)
30歳未満の0.1%、40歳未満の1%程度で発症する病気です。無月経患者の5~10%はこの早発卵巣不全(POF)と考えられるため、 単なる無月経と考えることはある意味危険かもしれません。
早発卵巣不全(POF)は無月経ではあるものの、閉経している場合と、未閉経の場合があります。
早発卵巣不全は卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が高いものの、 エストロゲンの分泌が低く、更年期と同様の状態になります。
原因は遺伝の他、上記化学療法や自己免疫疾患などと考えられ、 治療にはエストロゲンやプロゲステロン補充療法などが使われます。
卵管結紮(らんかんけっさく)
卵管から卵子が通過できないようにすることで、 妊娠できなくする不妊手術の方法の1つです。副作用として若年性更年期障害の症状が出る場合があります。
感染症、自己免疫疾患
おたふく風邪やサイトメガロウイルスのような感染症、 甲状腺疾患、1型糖尿病、狼瘡、関節リウマチ、クローン病、セリアック病、慢性カンジダ症(カンジダ症)、 多腺性機能不全症候群、白斑、悪性貧血などの自己免疫疾患も若年性更年期障害の原因となります。これは、体の免疫システムが誤って卵巣を攻撃し、エストロゲンやプロゲステロンの産出を妨害するためと考えられています。
先天性疾患・遺伝
早期閉経の家族歴を持つ女性の早期に閉経するリスクは、おおよそ6~12倍になります。てんかん
多くの研究において、 てんかんを持つ女性は、 早発卵巣不全(POF)を経験する可能性が高くなることが分かっています。ある研究では、てんかんを持つ女性の早発卵巣不全(POF)発症率は概ね14%(通常は1%)だったと発表しています。
酵素、代謝異常
ガラクトース血症(ガラクトースをグルコースに変換する酵素)やアロマターゼ欠損症(エストラジオールを合成する酵素)、副腎酵素欠損症などの酵素異常、代謝異常も、原発性無月経、エストロゲンの分泌低下、若年性更年期障害の原因となります。その他病気
不均衡多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、高プロラクチン血症、脳腫瘍、重症頭部外傷、 腎臓病、肝硬変、 特発性血小板減少性紫斑病、副腎不全なども若年性更年期障害の原因となります。薬の副作用
いくつかの薬は、副作用として、若年性更年期障害の同様の症状を引き起こします。骨粗しょう症の治療に使われるラロキシフェン(エビスタ)は、「ほてり」を引き起こします。 万が一特定の疾患によって薬を服用している場合、かかりつけの医師あるいは薬剤師に副作用の症状をご相談下さい。
ストレス
ストレスが若年性更年期障害の原因となります。ストレスを受けると副腎が疲弊してしまいますが、 副腎は女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを生成しています。
そのため、ストレスにより副腎の機能が低下することは、エストロゲンの分泌量を低下させ、 若年性更年期障害の原因となります。
ボストン大学の研究によると、 36~45歳の600人の女性を分析したところ、 経済的困難の下で暮らす女性は、 80%以上の確率で早期閉経を経験することがわかりました。
これは、ストレス以外に、タバコや食生活、低体重なども原因とみられるものの、 金銭的・生活ストレスも若年性更年期障害の一要因となります。
喫煙
タバコに含まれる炭化水素は卵巣における卵子を殺します。卵巣における卵子は生まれた時から数が決まっており、この卵子が枯渇することを閉経と呼びます。 そのため、喫煙によって卵子を殺すことは、それだけ閉経を早め、若年性更年期障害になる確率があがります。
ほとんどの研究において、 喫煙者は閉経の年齢を1~3年早めることが示されており、 コロンビア大学で494名の女性を調査したところ、 「一日14本以上喫煙する人は、2.8年閉経が早くなっていた」、と発表しており、 他の研究では、最大9年、閉経を早めたとされています。
軽すぎる体重、肥満、食生活
体重が軽すぎる場合、若年性更年期障害の原因となります。エストロゲンは卵巣以外に、脂肪細胞によって作られますが、 体重が軽いことは、脂肪が少なすぎることを意味し、 エストロゲンの分泌量に大いに影響します。
また、軽すぎる体重は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、 卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)の分泌量を低下させるため、 エストロゲン、プロゲステロンの分泌も低下します。
脂肪と排卵の両面から、著しくエストロゲンの分泌が低下することは、 無月経、若年性更年期障害を引き起こします。
調査機関によって異なるものの、 標準体重の80~85%以下の体重しかない場合、無月経、若年性更年期障害になる確率が大幅に増加します。
福井大学で行われた実験によると、 6名の低体重による下垂体-卵巣機能不全症の症状を回復するのに、 15ヶ月~6年という長い期間を要した、と発表しており、 おおよそ20~30%の人は体重が元に戻っても、 そのまま回復せず、不妊や早期閉経につながります。
不妊治療を頑張っていた人が、たまたま過食によって標準体重まで戻った結果、 すぐに妊娠した、ということは珍しくありません。
反対に、過食によって太りすぎても、糖尿病など若年性更年期障害の原因となるため、 健康体重、標準体重であることが無月経、若年性更年期障害、早期閉経の予防につながります。
無月経、若年性更年期障害が心配される危険体重
標準 | 標準体重の85% | 標準体重の80% | |
身長 | BMI22 | 痩せすぎ | 無月経が心配される危険体重 |
140cm | 43.1 | 36.7 | 34.5 |
145cm | 46.3 | 39.3 | 37.0 |
150cm | 49.5 | 42.1 | 39.6 |
155cm | 52.9 | 44.9 | 42.3 |
160cm | 56.3 | 47.9 | 45.1 |
165cm | 59.9 | 50.9 | 47.9 |
170cm | 63.6 | 54.0 | 50.9 |
175cm | 67.4 | 57.3 | 53.9 |
体重の単位(kg)は省略
体重の小数点第二以下四捨五入
内分泌かく乱化学物質
内分泌かく乱化学物質のいくつかは、エストロゲンの活動を阻害します。内分泌かく乱化学物質とは、日常生活に存在するもののうち、生体内部のホルモンに影響を及ぼす化学物質です。
最も代表的な例は「植物性エストロゲン」で、お豆腐や豆乳に含まれる大豆イソフラボンは、 エストロゲン様作用(のように働く)を引き起こす以外に、 エストロゲンの活動を阻害します。
この内分泌かく乱化学物質は、植物性エストロゲンのように働く物質だけでなく、 エストロゲンの活動を阻害するだけの物質もあり、 早期閉経や若年性更年期障害を引き起こす物質が存在します。
内分泌かく乱化学物質は数が非常に多いため、全てを取り上げることはできないものの、 アメリカの医学誌「臨床内分泌学&代謝学」で取り上げられた内容によると、 内分泌かく乱化学物質「パーフルオロカーボン(PFC)」の体内濃度(体内に取り込んでしまった濃度)が最も濃い女性は、 エストロゲンの分泌量が最も低かった、と掲載しています。
辛い食べ物やアルコール
辛い食べ物やアルコールはほてりと似た症状が出る場合があります。ほてりは「血管拡張反射」による症状で、急激に血管が拡張し血流が増加した結果によるものですが、 辛い食べ物やアルコールは同様の作用を引き起こします。
若年性更年期障害に似た病気
若年性更年期障害は更年期障害と同様の症状のため、それぞれの症状で似た病気が存在するものの、 (更年期障害の各種症状については、更年期障害の症状と特徴をご参照下さい。)特に、以下の3つは、若年性更年期障害と多くの似た症状が出るため、若年性更年期障害と決めつけてしまう前に、これらの病気の可能性を疑う必要があります。若年性更年期障害に似た症状を持つ病気
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若年性更年期障害の治療方法
若年性更年期障害を治療する万能な方法はありません。若年性更年期障害の原因は様々であるため、それぞれ原因にあった治療方法が必要です。
例えば低体重が原因の場合、摂食障害や美容意識(細い方が良いとする認識)に対する認識の変化、 ストレスが原因の場合、ストレスの元となるストッサーに対する対策が必要です。
また、外科的手術や病気などによりすでに早期閉経している場合には、 医師とのコミュニケーションにより、各種症状を抑える、長期治療計画が必要となります。
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